日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



上塚司(天園)
うえつか・つかさ(てんえん)
著作権継承者許諾済


1888-1978。衆議院議員。高橋是清の秘書官として、二・二六事件に遭遇。

上塚司 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

    藤原為氏
勅としていのる
しるしの神風に
よせくる波は
かつくだけつつ
  天園書

[訓読]

藤原(ふじわら)為氏(ためうじ)
(ちょく)としていの()
しるし()神風(かみかぜ)
()せくる(なみ)
かつくだ()けつつ
  天園(てんえん)(しょ)

[語釈]

藤原(ふじわら)為氏(ためうじ)
 この歌の作者。鎌倉時代中期の歌人。生没年は1222-1286。
(ちょく)
 天皇のご命令。ここでは鎌倉時代の弘安4年(1281年)の元寇における蒙古調伏の勅命。当時勅使が伊勢神宮に派遣された。
神風(かみかぜ)
 弘安4年7月30日、九州に上陸を開始していた蒙古の12万2千人・艦船4,400隻の大軍は、夜来の暴風雨のため、撤退を余儀なくされた。
()せくる(なみ)
 海を蔽う蒙古の大軍を波に譬えた。
天園(てんえん)
 上塚司の雅号。南米ブラジルのアマゾン移民事業に長年携わっていたので、アマゾンの当て字「天園」を号とした。

[訳]

   藤原為氏の歌より
勅命により伊勢神宮に祈ると、
 その霊験で神風が吹き、
  大波のように打ち寄せる蒙古軍は、
    砕け散った。
      天園書く。

2010年9月12日公開。2010年12月14日一部修正。

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