日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



玉乃世履(五龍) 五言絶句
たまの・せいり(ごりゅう)


1825-1886。初代大審院長。

玉乃世履 五言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

鐘声枯柳外
斜日近山腰(韻)
孤舟風無力
帆影長於橋(韻)
(五言絶句。平声蕭韻)
  五龍 玉乃世履

[訓読]

鐘声(しょうせい)枯柳(こりゅう)(そと)
斜日(しゃじつ)山腰(さんよう)(ちか)
孤舟(こしゅう)(かぜ)(ちから)()
帆影(はんえい)(はし)よりも(なが)
    五龍(ごりゅう) 玉乃(たまの)世履(せいり)

[語釈]

鐘声(しょうせい)
 夕刻の鐘の音。

枯柳(こりゅう)
 秋から冬にかけての柳。枯れているように見えることから。

斜日(しゃじつ)
 夕日。

山腰(さんよう)
 山の中腹。

孤舟(こしゅう)
 ただ一艘の舟。

帆影(はんえい)
 本来は「帆のすがた」という意味。ここでは「橋より長い」といっているので、「帆の影」のことと考えられる。

[訳]

夕暮れの鐘の音が、枯れ柳のむこうから聞こえてくる。
夕日は山の中腹あたりに近づいてきた。
ただ一艘の舟が風のない水面に浮かんでいるのが見える。
その帆の影は、夕日を受けて橋よりも長く伸びている。
            五龍 玉乃世履

2009年9月6日公開。

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