日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



塩谷温(節山) 七言絶句
しおのや・おん(せつざん)


1878-1962。東京帝国大学教授(支那文学)。

塩谷温 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

南海男子意気豪(韻)
尊王討幕節操高(韻)
堂堂巨像湾頭立
嘯傲鯨洋万里濤(韻)
(七言絶句。平声豪韻)
 桂浜坂本竜馬像 節山
※本文のあとに小字で「嘯傲誤顛」とある。「嘯傲」ではなく「傲嘯」とする意かと思われるが、通常は「傲嘯」とはいわないため、「嘯傲」のままとした。

[訓読]

南海(なんかい)男子(だんし)意気(いき)(ごう)なり
尊王(そんのう)討幕(とうばく)節操(せっそう)(たか)
堂堂(どうどう)たる巨像(きょぞう)湾頭(わんとう)()
鯨洋(げいよう)嘯傲(しょうごう)万里(ばんり)(なみ)
 桂浜(かつらはま)坂本竜馬(さかもとりょうま)(ぞう) 節山(せつざん)

[語釈]

南海(なんかい)
 南海道。紀伊・淡路・阿波・讚岐・伊予・土佐の六か国を南海道というが、ここでは坂本竜馬の活躍した土佐のこと。

意気(いき)(ごう)
 意気盛んであること。意気軒昂。

節操(せっそう)
 正しい道理を守ろうとする気持ち。

湾頭(わんとう)
 入り江のそば。

鯨洋(げいよう)
 ここでは太平洋のこと。

嘯傲(しょうごう)
 何の拘束も受けず自由を楽しむこと。

桂浜(かつらはま)
 高知市南部、浦戸湾口の西岸の浜。

[訳]

土佐の男子は意気軒昂で、
尊王・倒幕の理想に燃えた。
堂堂たる竜馬の巨像は入り江に臨み、
広々とした太平洋の万里にわたる波を見ながら気ままにふるまっている。
   桂浜の坂本竜馬像 節山

2009年12月6日公開。

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