日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



渋沢栄一(青淵) 七言絶句
しぶさわ・えいいち(せいえん)


1840-1931。大実業家。500以上の会社を設立。

渋沢栄一 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

春花落尽忽秋霜(韻)
一瞬朝暉変夕陽(韻)
休説世間人事劇
観来造物亦多忙(韻)
(七言絶句。平声陽韻)
  辛亥八月 青淵録旧作

[訓読]

春花(しゅんか)()()くせば(たちま)秋霜(しゅうそう)
一瞬(いっしゅん)朝暉(ちょうき)(へん)じて夕陽(せきよう)
()くを()めよ世間(せけん)人事(じんじ)(はげ)しと
観来(かんらい)造物(ぞうぶつ)()多忙(たぼう)
  辛亥(しんがい)八月(はちがつ) 青淵(せいえん)旧作(きゅうさく)(ろく)

[語釈]

春花(しゅんか)
 春の花。桜など。

秋霜(しゅうそう)
 秋に降りる霜。

朝暉(ちょうき)
 朝日の光。

夕陽(せきよう)
 夕日。入日。

人事(じんじ)
 世間の出来事。

(はげ)
 めまぐるしい様。「はやし」と読んでもよい。

観来(かんらい)
 見てみれば。「来」は助辞でとくに意味はない。

造物(ぞうぶつ)
 自然。

辛亥(しんがい)
 「かのと・い」の年。ここでは明治44年(1911年)。

青淵(せいえん)
 作者の雅号。

(ろく)
 書き記す。

[訳]

春の花が散れば、たちまち秋の霜が置く。
一瞬の朝日も、たちまち夕日に変わる。
人間社会の出来事がめまぐるしいなどと言わないでほしい。
見てみれば、自然だって忙しく移り変わっているではないか。
       明治44年8月 青淵が旧作を記した。

2009年3月28日公開。

ホーム >英傑の遺墨が語る日本の近代 > 作品リスト > 渋沢栄一

ホーム >英傑の遺墨が語る日本の近代 > 作品リスト > 渋沢栄一