日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



大町芳衛(桂月)
おおまち・よしえ(けいげつ)


1869-1925。詩人。評論家。随筆家。紀行文作家。

大町桂月 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

皇国の民たるに負かず、我等の祖先を辱めず。身体を鍛へて寒暑を物とせず、精神を練って生死に動かず。博く深く知る。一身を天職に捧ぐ。人を愛す。千辛万苦の間にも微笑す。眼を古今東西に注ぐ。俯仰して天地に恥ぢず。桂月

[読み方]

皇国(こうこく)(たみ)たるに(そむ)かず、我等(われら)祖先(そせん)(はずかし)めず。身体(しんたい)(きた)()寒暑(かんしょ)(もの)とせず、精神(せいしん)()って生死(せいし)(うご)かず。(ひろ)(ふか)()る。一身(いっしん)天職(てんしょく)(ささ)ぐ。(ひと)(あい)す。千辛万苦(せんしんばんく)(かん)にも微笑(びしょう)す。()古今(ここん)東西(とうざい)(そそ)ぐ。俯仰(ふぎょう)して天地(てんち)()()ず。桂月(けいげつ)

[語釈]

俯仰(ふぎょう)して天地(てんち)()()
 『孟子』尽心上にある言葉で、自分の心や行動に全くやましいところがないこと。

[訳]

皇国の民としての体面を堅持して、我々の祖先を辱めるような行為は決してしない。そのために、身体を鍛えて、寒さ・暑さを物ともしない強靭さを得る。また、精神を鍛えて、生きるか死ぬかという究極の場面でも動じないようになる。それでいながら、他人をいつくしみ、どんなに苦しくても微笑している。そして、古今東西に目を向けて大局観に立つ。かくのごとくであれば、顧みてやましいところは何もない。
                    桂月

2010年9月12日公開。

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