日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



大久保利通(甲東) 七言絶句
おおくぼ・としみち(こうとう)


1830-1878。内務卿。明治初期の指導的政治家。

大久保利通 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

奉勅単航向北京(韻)
黒煙堆裏蹴波行(韻)
和成忽下通州水
閑臥篷窓夢自平(韻)
(七言絶句。平声庚韻)
   下通州作 甲東

[訓読]

(ちょく)(ほう)じて単航(たんこう)北京(ぺきん)()かう
黒煙(こくえん)堆裏(たいり)(なみ)()って()
()()って(たちま)(くだ)通州(つうしゅう)(みず)
(かん)篷窓(ほうそう)()して(ゆめ)(おのずか)(たい)らかなり
   通州(つうしゅう)(くだ)るの(さく) 甲東(こうとう)

[語釈]

黒煙(こくえん)堆裏(たいり)
 蒸気船の黒煙がもくもくと立ち上る中。

()()
 清朝との間で台湾出兵の講和が成立したこと。

通州(つうしゅう)
 北京と天津の間にある町。水とは白河(はくか)。

(かん)
  講和が成立して心のどかな様子。

篷窓(ほうそう)
 船窓。

甲東(こうとう)
 作者の雅号。

[訳]

講和締結の詔勅を承って単身北京へと向かった。
蒸気船の黒煙はもくもくと立ち上り、黄海の波を蹴って勢いよく渡った。
講和が成り、船に乗って通州の川をくだれば、
心のどけく、身を船窓に横たえて夢もおのずと安らかである。
   通州から川を下るときの作 甲東

2009年3月28日公開。

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