成島弘(柳北) 七言絶句
なるしま・ひろし(りゅうぼく)
1837-1884。幕臣。朝野新聞社長。『柳橋新誌』。
[解読]
野肴村醸小筵開(韻)
且注清香勧一杯(韻)
頃歳栽楳多楽事
芳魂返日故人来(韻)
(七言絶句。平声灰韻)
梅花下小飲 柳北僊史
[訓読]
野肴村醸小筵開く
且つ清香を注ぎ一杯を勧む
頃歳楳を栽えて楽事多し
芳魂の返る日故人来る
梅花の下の小飲 柳北僊史
[語釈]
野肴
かざらない、粗野な料理。
村醸
村で醸造した酒。どぶろく。
小筵
ささやかな宴会。
清香
清らかな香り。ここでは酒のこと。
頃歳
最近。近年。
楽事
楽しいこと。
芳魂の返る日
彼岸のことをしゃれて言ったもの。「芳魂」とは美人の魂のこと。
故人
旧友。
僊史
「僊」は「仙」に同じ。雅号に付けて、隠居して俗世間から離れていることを言ったもの。
[訳]
かざらない肴と村の酒で小さな宴会を開き、
酒を注いで一杯飲むことを勧める。
最近、梅を植えてから、楽しみが増えた。
彼岸の折に、旧友が尋ねてきてくれたのだ。
梅の花の下での小宴会 柳北仙史
2009年3月28日公開。