中浜東一郎 七言絶句
なかはま・とういちろう
1857-1937。ジョン万次郎の長男。医学者。
[解読]
重加七十八年春(韻)
和気団欒感更新(韻)
百歳功名鏡裏夢
児孫遶膝自相親(韻)
(七言絶句。平声真韻)
甲戌元旦作 東一郎書
[訓読]
重ね加う七十八年の春
和気・団欒、感更に新たなり
百歳の功名は鏡裏の夢
児孫膝を遶りて自ら相い親しむ
甲戌元旦の作 東一郎書
[語釈]
和気
のどかにうちとけ和らぐこと。
団欒
あつまって車座にすわること。
鏡裏の夢
鏡の中の夢。はかないたとえ。
甲戌
「きのえ・いぬ」の年。昭和9年(1934年)。
[訳]
また年を加え78歳となった新春に、
家族でのどかに輪になってくつろぐいでいると新たな感興が起こってくる。
百年語り継がれるような功名を立てたところで、所詮は鏡の中の夢のような、はかないものにすぎない。
老いた私の膝のまわりに子や孫が集まって仲むつまじくしているのが、何よりも幸せだ。
昭和9年元旦の作 東一郎書く
2009年9月6日公開。