日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



宮城宣政(晴瀾) 七言絶句
みやぎ・のぶまさ(せいらん)


1868-1944。漢詩人。自由新聞で活躍。

宮城宣政(晴瀾) 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

利峯秀色紫崔嵬(韻)
沼水疏通沃野開(韻)
満地吹香皆薬草
天塩北嶋現蓬莱(韻)
(七言絶句。平声灰韻)
   天塩雑感  晴瀾居士

[訓読]

利峯(りほう)秀色(しゅうしょく)(むらさき)にして崔嵬(さいかい)
沼水(しょうすい)疏通(そつう)沃野(よくや)(ひら)
満地(まんち)吹香(すいこう)(みな)薬草(やくそう)
天塩(てしお)北嶋(ほくとう)蓬莱(ほうらい)(げん)
   天塩(てしお)雑感(ざっかん)  晴瀾(せいらん)居士(こじ)

[語釈]

利峯(りほう)
 高く聳え立つ山。ここでは北海道の天塩から見える利尻富士のこと。

秀色(しゅうしょく)
 聳え立つ山の色。

崔嵬(さいかい)
 険しい山が聳え立つ様子。「紫崔嵬」は、杜甫の詩『冬到金華山観、因得故拾遺陳公学堂遺跡』の「金華紫崔嵬」から採った句。

沼水(しょうすい)
 天塩川のこと。

疏通(そつう)
 通じること。ここでは天塩川が平野を流れて、海まで通じていること。

沃野(よくや)
 よく土地の肥えた平野。

満地(まんち)
 地上一杯に広がっていること。

吹香(すいこう)
 香りのよい花。

天塩(てしお)北嶋(ほくとう)
 利尻島のこと。

蓬莱(ほうらい)
 東海の島にあり、仙人が住むという伝説の島。

[訳]

利尻富士は、紫にけぶり、高くそびえたっている。
手塩川は平野を横切り、肥沃な土地を開いた。
この地上に満ちる香りのよい花はみな薬草である。
そして、ここ手塩の北にある利尻島は、まさに蓬莱である。
天塩雑感  晴瀾居士

2009年9月6日公開。

ホーム > 英傑の遺墨が語る日本の近代 > 作品リスト > 宮城宣政

ホーム > 英傑の遺墨が語る日本の近代 > 作品リスト > 宮城宣政