日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



松浦鎮次郎 七言絶句
まつうら・しげじろう


1872-1945。九州大学総長。米内内閣文相。

松浦鎮次郎 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

南山山下雨絲絲(韻)
春入京城柳展眉(韻)
閒歩新晴江畔路
毎聞黄鳥立多時(韻)
(七言絶句。平声支韻)
 松浦 鎮

[訓読]

南山(なんざん)山下(さんか)(あめ)絲絲(しし)たり
(はる)京城(けいじょう)()って柳眉(りゅうび)()
閒歩(かんぽ)すれば(あら)たに()江畔(こうはん)(みち)
黄鳥(こうちょう)()(ごと)()つこと多時(たじ)
 松浦(まつうら) (ちん)

[語釈]

南山(なんざん)
 具体的な地名ではなく、南側にある山の意。

絲絲(しし)
 糸のように細い雨の形容。

京城(けいじょう)
 みやこ。

柳眉(りゅうび)
 柳の葉。柳の葉のように細い美人の眉のこともいう。

閒歩(かんぽ)
 閑歩に同じ。ぶらぶら歩くこと。

黄鳥(こうちょう)
 うぐいす。

()
 ここでは立ち止まること。

[訳]

南の山のふもとには、しめやかに霧雨が降る。
都には春が訪れ、柳の葉も長く伸びてきた。
川端の道をぶらぶら歩くうちに、空は晴れ渡る。
うぐいすの声がするたびに、しばらく立ち止まる。
    松浦 鎮次郎

2009年10月12日公開。2009年10月14日修正。

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