日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



日下部東作(鳴鶴) 五言絶句
くさかべ・とうさく(めいかく)


1838-1922。明治大正期に書道界に君臨した大書家。

日下部鳴鶴 五言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

欝律史籀鼓
六書淵源開(韻)
篆隷楷行草
尽従此中来(韻)
(五言絶句。平声灰韻)
  石鼓文 鳴鶴仙史

[訓読]

欝律(うつりつ)たり史籀(しちゅう)()
六書(りくしょ)淵源(えんげん)(ひら)
(てん)(れい)(かい)(ぎょう)(そう)
(ことごと)()(なか)より(きた)
  石鼓文(せっこぶん) 鳴鶴(めいかく)仙史(せんし)

[語釈]

欝律(うつりつ)
 雷の音がゴロゴロと低く鳴る様子。
史籀(しちゅう)
 周の宣王の太史で、文字を統一し、「大篆(だいてん)」「籀文(ちゅうぶん)」という書体をつくった。
()
  「石鼓文」は、東周の時代に秦で作られたもので、鼓の形をした石に刻まれている。
六書(りくしょ)
 漢字の六種の書体、すなわち古文・奇字・篆書・左書(隷書)・繆書(繆篆=印章に使う篆書)・鳥虫書(装飾の多い篆書体)をいう。
淵源(えんげん)
 根源。ものごとの起り。
(てん)(れい)(かい)(ぎょう)(そう)
 現在通用している五つの書体。
仙史(せんし)
 雅号の後ろに付けて、隠遁者の意を示す。

[訳]

史籀の石の鼓が、雷が低く鳴りわたるようにゴロゴロと鳴って、
ここから書道の六書が起ってきた。
篆書、隷書、楷書、行書、草書、
すべてこの石の鼓の中から出てきたのだ。
  石鼓文の詩 鳴鶴仙史

2010年5月1日公開。

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