日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



勝安芳(海舟) 五言古詩
かつ・やすよし(かいしゅう)


1823-1899。咸臨丸艦長として渡米。江戸幕府軍艦奉行。明治政府海軍参議。枢密顧問官。

勝海舟 五言古詩 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

興廃気熱際(韻 去声霽韻)
挙世逐向背(韻 去声隊韻)
風化終不昧(韻 去声隊韻)
楽在詳天真
何以対上帝(韻 去声霽韻)
   海舟勝安芳
(五言古詩。去声隊韻・霽韻通韻)

[訓読]

興廃(こうはい)()(ねっ)するの(さい)
()()げて向背(こうはい)()
風化(ふうか)(つい)(くら)からず
(たの)しみは天真(てんしん)(つまびら)かにするに()
(なに)(もっ)上帝(じょうてい)(たい)せん
海舟(かいしゅう) (かつ)安芳(やすよし)

[語釈]

興廃(こうはい)
 盛んになることと、滅びること。ここでは明治維新で盛んになった新政府と、滅びた側の江戸幕府を指す。

()()げて
 世の中の人みんな。

向背(こうはい)()
 「向背」は順逆のなりゆき。

風化(ふうか)
 徳によって教化すること。

(くら)からず
 聡明なこと。朱子は「明徳は人が天から得たものであり、それによって虚霊不昧(心の働きが聡明)である」と述べている。(『大学章句』)

天真(てんしん)
 天から与えられた純粋な性質。

(つまびら)かにす
 すべてを細かい点にいたるまで明らかにすること。

上帝(じょうてい)
 ここでは天皇のこと。

[訳]

明治政府が興隆し、幕府は滅びて、熱気に満ちたていたときに、
世の中の人々はみな日和見で新政府を支持したすぎない。
しかし、天皇陛下の御徳による教化によって人民の心は聡明になり、
生来の純粋な性質をいかんなく発揮することを楽しむようになった。
天皇陛下の御恩徳に、我等はいかにしてお応えし奉ればよいだろうか。
     海舟・勝安芳

2009年9月6日公開。2009年9月10日修正。

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