日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



加藤政之助(城陽) 七言絶句
かとう・まさのすけ(じょうよう)


1854-1941。勅選貴族院議員。民生党顧問。

加藤政之助 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

雲濤渺渺幾千程(韻)
峩艦乗風驁背行(韻)
聖徳深霑南海島
鬱蒼草木四時栄(韻)
(七言絶句。平声庚韻)
 南洋雑詩之一 城陽

[訓読]

雲濤(うんとう)渺渺(びょうびょう)幾千程(いくせんてい)
峩艦(がかん)(かぜ)()驁背(ごうはい)(こう)
聖徳(せいとく)(ふか)(うるお)南海(なんかい)(しま)
鬱蒼(うっそう)たる草木(そうもく)四時(しいじ)(さか)
(ざっし)(いち) 城陽(じょうよう)

[語釈]

雲濤(うんとう)
 波のような雲。

渺渺(びょうびょう)
 果てしなく広がる様子。

幾千程(いくせんてい)
 どれほどの道のりか。

峩艦(がかん)
 大きな船。

驁背(ごうはい)
 「驁」は駿馬のこと。駿馬の背に乗って行く。

聖徳(せいとく)
 天皇陛下の御徳。

南海(なんかい)(しま)
 大正11年(1922年)、日本は第一次世界大戦で敗戦したドイツの植民地であった南洋諸島の一部を、国際連盟からの委託により統治することになった。

鬱蒼(うっそう)
 草木が繁茂している様子。

四時(しいじ)
 春・夏・秋・冬の四つの季節。一年中ということ。

[訳]

波のような雲が果てしなくどこまでも広がる。
大きな船は風に乗り、駿馬の背に乗って行くように進んでゆく。
陛下のお徳は、この南の島をも深くうるおしている。
おかげで草木は一年中薄暗くなるほどに茂っている。
 南洋雑詩の一 城陽

2009年10月12日公開。2009年10月14日修正。

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