鎌田景弼(酔石) 七言絶句
かまた・かげすけ(すいせき)
1842-1888。高知裁判所所長。佐賀県知事。
[解読]
前九後三経戦場(韻)
春山立馬望家郷(韻)
鉄衣乱点桜花雪
白於将軍両鬢霜(韻)
(七言絶句。平声陽韻)
勿来関図 酔石老人旧製
[訓読]
前九・後三、戦場を経て
春山立馬して家郷を望む
鉄衣乱点す桜花の雪
将軍両鬢の霜よりも白し
勿来の関図 酔石老人旧製
[語釈]
前九後三
前九年・後三年の役。東北を拠点とする安倍氏・清原氏が起こした乱を源義家が平定し、東日本に源氏の勢力が拡大するきっかけとなった。
立馬
馬をとめること。
家郷
故郷。
鉄衣
よろい。
乱点す
桜の花びらがあちこちに散らばる様子。
桜花の雪
雪のように白い桜。
将軍
源義家のこと。
両鬢の霜
両方の耳脇の毛が白髪になっていること。
勿来の関
福島県いわき市にあった古代の関所で、後三年の役を平定後、源義家がここを通ったときに、「吹く風をなこその関とおもへども道もせに散る山桜かな」(『千載集』)と歌に詠んだ(「陸奥国にまかりける時、勿来の関にて花の散りければよめる」)。「なこそ」とは「来るな」の意である。
[訳]
前九年の役、後三年の役の戦さを戦い終わって、
いま春の山に馬をとどめて、ふるさとをしのぶ。
鎧かぶとの周りには雪のように白い桜の花びらが散り乱れる。
その花びらは将軍の鬢の白髪よりも白い。
勿来の関の図。 酔石老人の旧作。
2009年9月6日公開。2009年9月10日修正。