伊藤博文(春畝) 古風
いとう・ひろぶみ(しゅんぽ)
1841-1909。初代総理大臣。立憲政友会総裁。
[解読]
戦後砲煙迹欲無(韻)
百年在皇謨(韻)
節旄銜命辞
(古風 平成虞韻)
乙未晩春
滄浪閣主人
博文
[訓読]
戦後、砲煙迹無からんと欲す
百年は皇謨に在り
節旄命を銜んで辞す
乙未晩春
滄浪閣主人
博文
[語釈]
戦後
日清戦争(1894‐1895)が終わった後。
砲煙
大砲の煙。
迹無からん
砲煙の痕跡がなくなろうとする。日清両国の間の戦争が終結しようとしていること。
百年
日清両国の今後百年の間柄。
皇謨
天皇陛下のご計画。
節旄
外交の大権。古代中国では他国への使者に「節旄」という名の旗印を与えたため。
命を銜む
任命を受けること。
乙未
きのと・ひつじの年。ここでは、明治28年(1895年)
滄浪閣
明治23年(1890年)に小田原に建てられた伊藤博文の別荘の名前。
[訳]
日清戦争が終わり、両国が交えた砲煙の痕跡も消え去ろうとしている。
今後百年の両国外交については、天皇陛下(明治天皇)が御胸中にすでに御計画あそばされている。
外交使節を拝命して、(皇居を)辞した。
明治23年晩春
滄浪閣主人
博文
2009年3月28日公開。2010年5月17日修正