日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



権藤成卿 七言絶句
ごんどう・せいきょう


1868-1938。思想家。農本自治主義を主唱。

権藤成卿 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

唱道善隣其舌長(韻)
衣冠何者是優娼(韻)
依然国際存巧偽
無復一人救逐王(韻)
(七言絶句。平声陽韻)
    成卿
※承句に「娼優」とあるが、韻を合わせるには「優娼」としなければならない。恐らく書き間違いである。

[訓読]

善隣(ぜんりん)唱道(しょうどう)()(した)(なが)
衣冠(いかん)何者(なにもの)()優娼(ゆうしょう)
依然(いぜん)たり国際(こくさい)巧偽(こうぎ)(そん)
()一人(いちにん)逐王(ちくおう)(すく)うもの()
    成卿(せいきょう)

[語釈]

善隣(ぜんりん)
 隣国と仲良くすること。

唱道(しょうどう)
 主張すること。

衣冠(いかん)
 高貴な人。身分の高い官吏。

優娼(ゆうしょう)
 太鼓もちや芸者。

依然(いぜん)たり
 相変わらずである。

巧偽(こうぎ)
 たくみな偽り。謀略。

逐王(ちくおう)
 王位を簒奪された元国王。清国の廃帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくら・ふぎ)のことと思われる。

[訳]

隣国との友好を説く、立派な演説は聞き飽きるほどに長いが、
そんな立派なことを説く外交官たちは、みな太鼓もちや芸者みたいなもので、その場だけを楽しげに盛り上げているだけだ。
だから、国際社会には、あいもかわらず謀略がはびこっている。
位を追われた王様を助けようという義侠心をもつ者など、一人もいない。
   成卿

2009年10月12日公開。2009年10月14日修正。

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