主謂短語(ネクサス)が主語となる、「主謂主語」(ネクサス主部)の例句をもう一つ挙げておきましょう。
【例句1】
蜀舟泊岸下甚衆。(陸游『入蜀記』8月15日)
(訓読)蜀舟の岸下に泊まるもの(は)、甚だ衆し。
(現代語訳)蜀の舟がたくさん岸につながれている。
主語(主部)=主謂短語 | 謂語(述部)=状中短語 | |||
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主語(主部) | 謂語(述部)=述賓短語 | |||
謂詞 | 賓語 | [状語] | 謂詞 | |
蜀舟 | 泊 | 岸下 | [甚] | 衆。 |
次の例句は、主謂主語が条件を示している例です。訓読も条件節のように読みます。
【例句2】
五日不雨、可乎。(蘇軾『喜雨亭記』)
(訓読)五日雨ふらずんば可ならんや。
(現代語訳)五日間雨が降らなくても大丈夫だろうか。
主語(主部)=主謂短語 | 謂語(述部) | |||
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主語(主部) | 謂語(述部)=状中短語 | |||
[状語] | 謂詞 | 謂詞 | <句末助詞> | |
五日 | [不] | 雨、 | 可 | <乎>。 |
次は、主謂主語が時点を示している例です。「自~来」は「~したときから」という意味の介詞結構ですが、この介詞結構の中に主謂短語「足下為諌官」が入り込んでいます。
介詞結構「自~来」は普通は動詞の状語になりますが、独立して句首に提示される場合は、主語として扱うべきです。
【例句3】
自足下為諌官来、始得相識。(欧陽脩『与高司諌書』)
(訓読)足下の諌官と為りて自り来、始めて相識るを得たり。
(現代語訳)あなたが「諌官」(皇帝を諌める官職)の役職に就いてから、初めてお知り合いになることができました。
主語(主部)=主謂短語 | 謂語(述部)=述賓短語 | ||||||
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<介詞> | 主語(主部) | 謂語(述部) | <助詞> | ||||
謂詞 | 賓語 | [状語] | 謂詞 | 賓語 | |||
<自> | 足下 | 為 | 諌官 | <来>、 | [始] | 得 | 相識。 |
このように主謂主語は条件や時点を表す用法があります。主謂主語は「之字短語」の形をとることもありますが、基本は同じです。
2007年7月16日公開。