日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第3節 主謂短語




(2)主謂主語句(ネクサス主部)

 主謂短語(ネクサス)が主語となる、「主謂主語」(ネクサス主部)の例句をもう一つ挙げておきましょう。

【例句1】

蜀舟泊岸下甚衆。(陸游『入蜀記』8月15日)

(訓読)蜀舟(しよくしゆう)岸下(がんか)()まるもの(は)、(はなは)(おお)し。

(現代語訳)蜀の舟がたくさん岸につながれている。

主語(主部)=主謂短語謂語(述部)=状中短語
主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
謂詞賓語[状語]謂詞
蜀舟岸下[甚]衆。

 次の例句は、主謂主語が条件を示している例です。訓読も条件節のように読みます。

【例句2】

五日不雨、可乎。(蘇軾『喜雨亭記』)

(訓読)五日(いつか)(あめ)ふらずんば()ならんや。

(現代語訳)五日間雨が降らなくても大丈夫だろうか。

主語(主部)=主謂短語謂語(述部)
主語(主部)謂語(述部)=状中短語
[状語]謂詞謂詞<句末助詞>
五日[不]雨、<乎>。

 次は、主謂主語が時点を示している例です。「自~来」は「~したときから」という意味の介詞結構ですが、この介詞結構の中に主謂短語「足下為諌官」が入り込んでいます。

 介詞結構「自~来」は普通は動詞の状語になりますが、独立して句首に提示される場合は、主語として扱うべきです。

【例句3】

自足下為諌官来、始得相識。(欧陽脩『与高司諌書』)

(訓読)足下(そつか)諌官(かんかん)()りて()(このかた)(はじ)めて(あい)()るを()たり。

(現代語訳)あなたが「諌官」(皇帝を諌める官職)の役職に就いてから、初めてお知り合いになることができました。

主語(主部)=主謂短語謂語(述部)=述賓短語
<介詞>主語(主部)謂語(述部)<助詞>
謂詞賓語[状語]謂詞賓語
<自>足下諌官<来>、[始]相識。

 このように主謂主語は条件や時点を表す用法があります。主謂主語は「之字短語」の形をとることもありますが、基本は同じです。



2007年7月16日公開。

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