日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第2節 詞と短語




(15)双賓短語2 第二賓語が処所賓語の場合

 双賓短語で、第二賓語が処所詞(場所を表す名詞)の場合を見ておきます。

 従来の説では、英文法などからの類推で、第二賓語が処所詞(場所を表す名詞)である場合には、第二賓語を状語(「補語」と呼ばれる場合が多い)と考えています。しかし、これも賓語と見るほうが、分かりやすいのです。

 第二賓語が処所詞の場合は、前節でみたような双賓短語とは異なり、語順の入れ替えや言い換えができません。つまり、第1賓語が人を表し、第2賓語が場所を表すという語順が固定されてしまうわけです。処所賓語は、介詞「於」を伴うこともできますし、「於」なしでもかまいません。※

※松下大三郎著『標準漢文法』798ページを参照。

【例句1】

成王・・・立微子於宋。(蘇軾『志林』)

(訓読)成王(せいおう)微子(びし)(そう)()つ。

(現代語訳)周の成王は、殷の子孫である微子を宋に封じた。

主語(主部)謂語(述部)=双賓短語
主語謂詞賓語賓語
成王微子(於)宋。

 次の例句は、処所賓語の前に介詞「於」がない例です。

【例句2】

僕送之江上。(蘇軾『志林』)

(訓読)(ぼく)(これ)江上(こうじよう)(おく)る。

(現代語訳)私は彼(甫子辯=ほ・しべん)を川のほとりまで見送った。

主語(主部)謂語(述部)=双賓短語
主語謂詞賓語賓語
江上。


2007年7月16日公開。

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