双賓短語で、第二賓語が処所詞(場所を表す名詞)の場合を見ておきます。
従来の説では、英文法などからの類推で、第二賓語が処所詞(場所を表す名詞)である場合には、第二賓語を状語(「補語」と呼ばれる場合が多い)と考えています。しかし、これも賓語と見るほうが、分かりやすいのです。
第二賓語が処所詞の場合は、前節でみたような双賓短語とは異なり、語順の入れ替えや言い換えができません。つまり、第1賓語が人を表し、第2賓語が場所を表すという語順が固定されてしまうわけです。処所賓語は、介詞「於」を伴うこともできますし、「於」なしでもかまいません。※
※松下大三郎著『標準漢文法』798ページを参照。
【例句1】
成王・・・立微子於宋。(蘇軾『志林』)
(訓読)成王微子を宋に立つ。
(現代語訳)周の成王は、殷の子孫である微子を宋に封じた。
主語(主部) | 謂語(述部)=双賓短語 | ||
---|---|---|---|
主語 | 謂詞 | 賓語 | 賓語 |
成王 | 立 | 微子 | (於)宋。 |
次の例句は、処所賓語の前に介詞「於」がない例です。
【例句2】
僕送之江上。(蘇軾『志林』)
(訓読)僕之を江上に送る。
(現代語訳)私は彼(甫子辯=ほ・しべん)を川のほとりまで見送った。
主語(主部) | 謂語(述部)=双賓短語 | ||
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主語 | 謂詞 | 賓語 | 賓語 |
僕 | 送 | 之 | 江上。 |
2007年7月16日公開。