書名 | 日本漢文小説叢刊 第一輯(全5冊) |
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副題 | |
シリーズ名 | |
著者 | 王三慶 荘雅州 陳慶浩 内山知也 主編 |
出版社 | 台湾学生書局 |
出版年次 | 平成15年(2003年、民国92年) |
ISBN | 9789571511955 |
定価 | 3,500台湾元(輸入価格は三万円前後) |
著者の紹介 |
王三慶(台湾・成功大学・中文系) 荘雅州(台湾・中正大学・語言与文学研究中心主任) 陳慶浩(フランス国家科学研究センター) 内山知也(日本・筑波大学名誉教授) |
所蔵図書館サーチ | 啜茗談柄 ; 賢乎己 ; 當世新話 ; 日本虞初新志 ; 奇文觀止本朝虞初新誌 ; 譯準綺語 (日本漢文小説叢刊 ; 第1輯 . 筆記叢談類 ; 第1冊) 譚海 ; 夜窗鬼談 ; 東齊諧 (日本漢文小説叢刊 ; 第1輯 . 筆記叢談類 ; 第2冊) 談叢 ; 淞北夜譚 ; 大東世語 (日本漢文小説叢刊 ; 第1輯 . 筆記叢談類 ; 第3冊) 浦島子傳 ; 續浦島子傳記 ; 日本七福神傳 ; 含餳紀事 ; 昔昔春秋 ; 警醒鐵鞭 ; 太平記演義 ; 西征快心編 ; 海外異傳 (日本漢文小説叢刊 ; 第1輯 . 神怪傳説類 . 講史類 ; 第4冊) 唐話纂要 ; 阿姑麻傳 ; 本朝小説 ; 新橋八景佳話 ; 三山秘紀 ; 枕藏史 ; 春風帖 ; 大東閨語 ; 春臠折甲 ; 譯準開口新語 ; 奇談一笑 ; 囨譚 ; 如是我聞 ; 奇談新編 ; 寒燈夜話 (日本漢文小説叢刊 ; 第1輯 . 世情類 . 艶情類 . 笑話類 ; 第5冊) |
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本の内容: 本書は、日本人が漢文で書いた小説を幅広く集めた選集です。 本書が出版されたときには、本当に驚きました。掲載された漢文小説の量にまず驚き、それから、これが日本ではなく台湾において出版されたことに再び驚いたのです。 日本漢文は、国文学では永らく継子あつかいを受けていましたが、国内ではこうした選集の出版もできず、ついに外国の研究者が代わって出版してくれるまでなりました。本書を読んでショックを受けた日本の研究者および出版社は、ぜひとも奮起してください!(もちろん、外国の方が日本のことを研究してくださるのは、非常に嬉しいのです。決して悪意はありません。) 本書の体裁は、まず作品の改題(日本人の利用も考えて、日本語訳まで付けられている)、原本の一部分の写真版(序文など最初の部分や、本文の最初の部分。なお、挿絵はすべて写真版を掲載)、目次、本文という構成になっています。本文には原本についていた注や眉批(びひ=欄外に書き込まれた批評文)を転写した注が付けられています。また、本文は活字(繁体字)で、句読点は付されていますが、訓点や読み仮名はすべて排除されています。これは、中国人の編修なのでやむをえない所でしょうか。 掲載作品は次のとおりです。天理図書館の蔵書が中心になっていますが、所蔵館が明記されていないものもあります。収録作品は玉石混淆で、低級な作品も混じっているのは、ちょっと残念です。 第一冊 筆記叢談類一 啜茗談柄 藍沢 南城 著 賢乎己 山井 二無為 著 当世新話 藤井 淑 編 日本虞初新誌 近藤 元弘 編 奇文観止 本朝虞初新誌 菊池 三渓 著 訳準綺語 菊池 三渓 著 第二冊 筆記叢談類二 譚海 依田 学海 著 夜窗鬼談 石川 鴻斎 著 東斉諧 石川 鴻斎 著 第三冊 筆記叢談類三 談叢 依田 学海 著 淞北夜譚 信夫 淞北 著 大東世語 服部 南郭 著 第四冊 神怪伝説類 浦島子伝 作者不明 続浦島子伝記 作者不明 日本七福神伝 摩訶 阿頼耶 著 餳紀事 熊阪 台州 著 昔昔春秋 中井 履軒 著 警醒鉄鞭 田中 従吾軒 著 講史類 太平記演義 岡島 冠山 著 西征快心編 巌垣 月洲 著 海外異伝 齋藤 拙堂 著 第五冊 世情類 唐話纂要 岡島 冠山 著 阿姑麻伝 無量軒 著 本朝小説 川合 仲象 著 新橋八景佳話 愛花 情仙 著 艶情類 三山秘紀 金子 強 著 枕蔵史 足立 敬亭 著 春風帖 中島 棕陰 著 大東閨語 金 羅麻 著 春臠拆甲 活活庵主人 著 訳準開口新語 岡 白駒 著 奇談一笑 岡 白駒 著 囨譚 寺崎 蛠洲 著 如是我聞 観益道人 著 奇談新編 淡山子 著 寒灯夜話 負山 樵夫 著 個個の作品についての論評は、長くなりますので割愛します。私が最も感激したのは、つねづね読んでみたいと思っていた岡島冠山の『太平記演義』が掲載されていたことです。 本書は、出版自体がすぐれた業績であり、賞賛以外の批評はありえないのですが、あえて微瑕を挙げてみます。 菊池三渓の『奇文観止 本朝虞初新誌』所収の「木鼠長吉伝」という作品について、本書所載の活字版(全部で4ページ弱)と原本とを比較してみました。その結果、最初のほうに原本では「若鼯鼠遷樹」とある部分を「若如鼯鼠遷樹」と一字余計な附加をした誤りと、終わりのほうで「酒飰(飯)」を「酒飲」とした誤りを発見しました。4ページ弱に二つしか誤りがないことは、この種の翻刻本としては優秀な方だとは思いますが、テキストを使用する際には注意する必要があります。 草書で書かれた部分の解読に苦労したのか、「□」が目立つ部分がありました。(「大東世語序」、第三冊358ページ。)書道の専門家に協力を仰いだりして、解決できなかったのでしょうか。 本書全巻をとおして、文章末尾に著者自身が書いた「賛」の部分を、その文章に対する他人の批評文と並べて小字で掲載しているのは、不適当な措置だと思います。 これは不注意でしょうが、改題の日本語訳において、日本語ワープロで出てこない漢字が「?」のまま放置されている箇所があります。(第四冊380ページ。『海外異伝』日文出版説明)それから、『唐話纂要』の改題の日本語訳は、中国語の本文と全く違う文になっています。(第五冊5ページ)なお、『枕蔵史』改題は、『枕蔵史』が『枕草子』の翻訳であるかのような誤解を与えそうです。(第五冊219ページ) 本書では、原本の句読の切り方は無視され、編者が新たに句読を切っています。また、繰り返しになりますが、原本にあった訓点や読み仮名をすべて取り去り、日本語としての読み方が全く分からなくなっているのは、やはり残念です。 微瑕をあげつらいましたが、本意ではありません。私は本書の出来を心から歓迎し、編纂の労苦に対して賞賛を惜しみません。本書を開けば、必ず新しい発見があるはずです。 | |
2005年3月27日公開。 |