書名 | 日本漢文学の射程 |
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副題 | その方法、達成と可能性 |
シリーズ名 | |
著者 | 王小林・町泉寿郎 編 |
出版社 | 汲古書院 |
出版年次 | 平成31年(2019年) |
ISBN | 9784762936432 |
定価(税抜) | 8,500円 |
著者の紹介 | 多くの著者による共著。 |
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本の内容: 「日本漢文学」を表題に含む論文集です。「まえがき」によると、本書は香港城市大学で開催された国際ワークショップの成果をまとめたものとのことです。 なお、2019年には本書のほかに『文化装置としての日本漢文学』(勉誠出版)という「日本漢文学」を表題に含む論文集が発刊されていますが、本書と著者の一部が重なっているので、出版社は違いますが姉妹編のようなものかもしれません。 本書の内容は次のとおりです。 Ⅰ 日本漢文―文献研究とその方法 「聖徳」の転落―日本における緯書の享受と変容 王小林 ヤマタノオロチと九尾のキツネ―日中古代神話研究序説 牧角悦子 現代日本の中国思想古典学における漢文訓読法の位置―文言資料読解の現場から 市來津由彦 Ⅱ 近代教育と漢学・儒教 安井息軒「辨妄」に見える忠孝観念の性格―井上毅「教育勅語」との共通点に注目して 青山大介 日本の中等学校における儒学文化―校訓・校歌表象から 江藤茂博 戦前期台湾公学校の漢文教科書について 川邉雄大 Ⅲ 近代漢学と思想・宗教 『荀子』の性説は『韓非子』人間観の基礎にあらず 佐藤将之 「二つの陽明学」再論―近代日本陽明学の問題についての省察 呉震 「市民宗教」と儒教―中国の現在、日本の過去と儒教復興 キリ・パラモア Ⅳ 日本漢文学の可能性 祈禱する弘法大師―密教と漢文学の間にある願文 ニコラス・モロー・ウィリアムズ 近世東アジア外交と漢文―林羅山の外交文書を中心に 武田祐樹 隠逸の多様なイメージ―日本幕末維新期の漢詩人と陶淵明 マシュー・フレーリ 漢詩と政治批評―木下彪の「国分青厓と明治大正昭和の漢詩界」 町泉寿郎 古事記など古代のもの、思想を扱うもの、明治以降の漢詩等に関するもの、資料の整理したもの等、雑多な内容です。また、荀子・韓非子の性論に関する論文など、あまり「日本漢文学」に関係なさそうなものも含まれています。日本の漢文学を軸にこれだけ広範囲のテーマで論文が書けるということを示したいというのも一つの意図なのかもしれません。 私が個人的に興味をもった論文は、安井息軒の「辨妄」に関するもの、林羅山に関するもの、隠逸をキーワードに成島柳北らを論じたもの、木下彪についてのものです。以下に紹介します。 青山大介氏の『安井息軒「辨妄」に見える忠孝観念の性格―井上毅「教育勅語」との共通点に注目して』は、息軒の排耶書(キリスト教に対する非難の書)である『辨妄』に述べられた内容は、明治政府による基督教解禁令よりはるか以前、井上毅が息軒の三計塾に滞在したころから息軒が塾生に対して教授していたものであり、その根幹である忠孝観念は井上が起草した「教育勅語」にも伝わっていると論じています。 武田祐樹氏の『近世東アジア外交と漢文―林羅山の外交文書を中心に』は、羅山が作成した外交文書の原文を示して、当時の対ポルトガル、対李氏朝鮮、対明国への外交交渉を紹介し、羅山が外交において果たしていた役割について論じています。 マシュー・フレーリ氏の『隠逸の多様なイメージ―日本幕末維新期の漢詩人と陶淵明』は、陶淵明をキーワードとして、矢口謙斎と成島柳北の二人の「隠逸」の在り方の違いを論じています。これまで知られていなかった矢口謙斎を発掘・紹介したことは意義があると思います。 町泉寿郎氏の『漢詩と政治批評―木下彪の「国分青厓と明治大正昭和の漢詩界」』は、名著『明治詩話』(岩波文庫)の著者である木下彪の詳細な伝記を、縁故ある人々に丁寧に取材して明らかにした労作です。木下彪に『明治詩話』よりも重要な『国分青厓と明治大正昭和の漢詩界』という著作があるということも、これを読んで知りました。 | |
2021年1月31日公開 |