日本漢文の世界:本の紹介

書名 ちょっと気の利いた 漢文こばなし集
副題  
シリーズ名  
著者 諏訪原 研(すわはら けん)
出版社 大修館書店
出版年次 平成11年(1999年)
ISBN 4-469-23203-3
定価 2,000円
著者の紹介 著者(1954-)は、福岡で予備校の漢文講師をされている方です。本書のほかに、『漢語の語源ものがたり』(平凡社新書)の著書があります。
本の内容:

ちょっと気の利いた 漢文こばなし集

 漢文というと、堅苦しい人生訓のイメージがつきまとうようですが、これは著者にいわせると、学校教育の教材がそういうものばかりであるのが悪い、のだそうです。そこで著者は、気軽に楽しめる面白い漢文を集め、コメントをつけて、本書を作られました。ところが意外なことに、題材となったのは大学の入試問題で出題された文章でした。「入試に採用された漢文は、日頃漢文を飯の種にしている大学の先生たちの取って置きの話なので、読んでおもしろくないはずはない」(まえがき)とのことですが、面白いところに着目されたものです。
 本書の体裁は、漢文の原文が大きな活字で示され、ついで書き下し文、語釈、訳文があり、著者のコメントが挿入されるというオーソドックスなものですが、コメントがおもしろく、どんどん読めてしまいます。また、標題のつけかたがうまい。
 ちょっとだけ内容を紹介しましょう。本書には23のエピソードが収められていますが、そのうちの一つに「末は博士か大臣か・・・」というのがあります。これは、宋の時代の神童・仲永(ちゅうえい)という人のエピソードです。仲永は五歳の時に、誰からも教えられないのに立派な漢詩を作り、人人を驚かせました。仲永の父親はそれからというもの、仲永を連れまわし、漢詩を作らせては金儲けをしました。仲永は果たして後年、天才詩人として大成できるのでしょうか?(読んでのお楽しみ)著者は、この話のコメントに著名な音楽家・モーツァルトの例を挙げています。モーツァルトも幼時から神童ぶりを発揮し、父親の金儲けの種になるのですが、16歳にして早くも創作上の危機に直面しているのです。(実は仲永のエピソードは『唐宋八大家文読本』の掉尾を飾り、勧学の意を含むものです。作者は「新法」で有名な王安石。)
 面白そうでしょう? 大学入試の漢文も捨てたものではありません。しかし、著者にお伺いしてみますと、現今の受験生諸君の漢文力は、確実に落ちているそうです。たとえば、「朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆうべ)に死すとも可(か)なり」という言葉を知らない生徒は、今や大半にのぼるとのこと。著者は「センター試験」から漢文がなくなったら、わが国の漢文は滅ぶという危機感をもっておられました。ゆゆしき問題です。

ちょっと気の利いた 漢文こばなし集
2004年6月27日公開。

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