書名 | 日本語と漢字 |
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副題 | |
シリーズ名 | |
著者 | 森岡 健二(もりおか けんじ) |
出版社 | 明治書院 |
出版年次 | 平成16年(2004年) |
ISBN | 9784625433238 |
定価(税抜) | 9,400円 |
著者の紹介 | 著者(1917-2008)は言語学者で、近代日本語の成立について、研究されています。『近代語の成立(文体編、語彙編)』(明治書院)、『欧文訓読の研究』(明治書院)などの著書があります。上智大学名誉教授。 |
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本の内容:
本書の第一部は「文字論」です。ソシュール以来の西洋言語学は、文字を「言語」もしくは「言語の一部」と認めず、音声のみをその対象としてきました。しかし、日本語は漢字と深く結びついており、日本語の話者は音声を聞いて漢字(文字)を想起し、それにより概念に到達します。同音の漢語を瞬時に識別して誤らないのは、漢字が仲立ちになっているからなのです。ですから、日本語その本質を究明するには、音声だけを論ずるのみでは不十分であり、漢字との関係をも論じなければなりません。 第二部「明治から現代へ」では、現代漢語の成立史に説き及びます。明治時代、古い漢籍の言葉(詩文用語)は衰退し、西洋語の訳語が新しい漢語として定着しました。訳語は、当初は中国の宣教師が作った「英華辞典」の訳語を使用したものも多かったのですが、日本語として馴染まない語は次第に淘汰されました。 日本語は漢語やその他の外来語に常に晒され、それらが氾濫しているように見えても、日本語自体の中枢部分が確固としたものなので、自然とそれらに対して選択が働きます。それゆえ、日本語自体が崩壊することはありえません。 第三部「語彙と漢字の用法」では、「漢文訓読」の亜流としての「欧文訓読」が登場します。漢字を論ずる本で「欧文」を持ち出しているのは一見奇異な感じがしますが、まだ完全には日本語化していない「欧文訓読」のほうが、日本語化してしまった「漢文訓読」よりも、「訓読法」の本質を示すのには適しているのです。「訓読法」の解明に、このような独創的視点を提示したことは、類書には見られないところです。 最後に、第四部の「現代の漢字調査」では、JIS漢字表の特徴を分析しています。 本書は、日本語とは元来異質なものであった漢語が、いかにして日本語に同化されてきたのかという謎を、言語学の手法によって解明しようと試みています。その素材や方法は目新しく、的確であり、説得力に富んでいます。漢字と日本語の関係に関心を持つ方には、必読の書です。 | |
2005年3月27日公開。 |