日本漢文の世界:本の紹介

書名 おらんだ正月
副題 江戸時代の科学者達
シリーズ名 冨山房百科文庫20
著者 森 銑三(もり せんぞう)
出版社 冨山房
出版年次 昭和53年(1978年)
ISBN 4-572-00120-0
定価 1,200円
著者の紹介  著者(1895-1985)は、伝記作家として、卓越した仕事をした人です。晩年は、西鶴研究に打ち込みました。
 学歴は小学校を終えただけでしたが、刈谷町図書館の嘱託として、古文書整理をしたことをきっかけとして、古文書について深い学識を持つようになり、東大史料編纂所に入って、『大日本史料』編纂にも携わりました。
 史料編纂所を辞したあとは、著述に専心し、この『おらんだ正月』をはじめ好著が多くありましたが、50歳のとき東京大空襲で多年蒐集の資料が一夜にして灰燼となり、近世人物研究が十分にできなくなったことはまことに惜しいことです。
 先生の著作は、中央公論社の『森銑三著作集』(正篇12巻別巻1、続編16巻)に収められています。
本の内容:

おらんだ正月 (冨山房百科文庫 20)

 この本は、森先生が雑誌『子供の科学』に連載された、江戸時代の科学者たちの伝記を一冊にまとめられたもので、初版が出版されたのは、昭和13年のことです。
 子供向けの伝記ですから、語り口もやさしく、古い本ですが非常に読みやすいのが特徴です。いまでも絶版になることなく、読み継がれているは驚くべきことだと思います。
 この本を一読した方は、かならずや先人たちが学問に寄せた情熱に感動し、それら先人たちへの尊敬の念がわいてくるはずです。それとともに、江戸時代の学問が漢学ばかりではなく、いろいろな方面に広がっていたことにも驚きを禁じえないと思います。私は中学生のときにはじめて読みましたが、以後ときどき読み返すごとに、あらたな感動を覚えます。
 この本にとりあげられた先人たちは、いずれも有名な人ばかりです。著名な漢学者たちもこれら科学者たちと交流をもっていたので、漢学史を研究する人びともこれらの科学者たちについて知っておく必要があります。
 たとえば、帆足万里や佐久間象山などは、本人自身が漢学者でもありますし、漢学者・大槻盤渓は大蘭学者・大槻盤水(玄沢)の子です。また、高野長英ら蛮社の人人は、漢学者の安積艮斎(あさか・ごんさい)や松崎慊堂(まつざき・こうどう)とも交流がありました。また、漢学者・塩谷宕陰(しおのや・とういん)は、兵法家・鈴木春山の墓碑の文章を書いています。また、植物学者・化学者として名高い宇田川榕庵(うたがわ・ようあん)は、「酸素」などの訳語を数多く作っていますが、これは漢学の学力の裏打ちがあったから可能だったことです。榕庵はシーボルトとも交流があり、幅広い知識人でした。このように、江戸時代の学問は多岐にわたり、学者たちも自由に交流していました。
 この本を読んで、江戸時代の科学史の研究に志した人びとも多いと聞きます。子供にもぜひとも読ませたい本です。「森銑三入門」としても最適の一冊です。

おらんだ正月 (冨山房百科文庫 20)
2002年2月24日公開。

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