日本漢文の世界:本の紹介

書名 明治の漢学者たち
江戸の漢学者たち
(ここでは上記の2冊の本を同時に紹介しています。)
副題  
シリーズ名  
著者 町田 三郎(まちだ さぶろう)
出版社 研文出版
出版年次 平成10年(1998年)
ISBN 明治の → 4-87636-150-9
江戸の → 4-87636-155-X
定価 明治の → 5,000円(現在品切れ状態)
江戸の → 4,500円
著者の紹介 著者(1932-)は、九州大学名誉教授。中国思想史、日本漢学専攻。亀井南冥・昭陽全集、楠本端山・碩水全集(ともに葦書房)の編集に参加されています。
本の内容:

明治の漢学者たち 江戸の漢学者たち

 『明治の漢学者たち』は、明治の漢学者として著名な人たち、すなわち重野成斎、竹添井井、岡鹿門、島田篁邨、岡松甕谷らを取り上げており、しかもそれぞれの作品を紹介しながら、それに即して叙述するというオーソドックスな記述で、非常に信頼できます。
とくに竹添井井の『桟雲峡雨日記』、岡鹿門の『観光紀游』は、明治初期における中国旅行記です。当時、中国人の書いた山水記や史伝を読んで、中国の山野に想像を巡らせるしかなかったわが国の知識人が、中国の国土をはじめて現実に踏みしめた感動が伝わってきます。
 岡松甕谷は、川田甕江とならんで「二甕」と称された大家ですが、これまで伝記らしい伝記がありませんでした。甕谷先生は、私の愛読する中江兆民の漢学の師で、兆民先生が『一年有半』の中で最大限の賛辞を呈しているのに、どのような人物であるのか、今まで知る由もありませんでした。本書によって甕谷先生の学問がどのようなものであったかを概観することができたことは、私にとって大きなよろこびでした。
 そのほか、良質な漢文のテキストとして、現在も盛んに用いられている、冨山房の『漢文大系』出版時における服部宇之吉博士の活躍や、東京帝国大学にわずか数年だけ設置され、市村瓉次郎、林泰輔、西村天囚、安井小太郎らの俊秀を輩出した「古典講習科」のことなど、興味深い話がたくさん出てきます。井上哲次郎(哲学者)、遠藤隆吉(社会学者)ら、漢学以外を専門として名を成した人人の漢学上の業績についても触れられています。かれらは漢学という強力なバックボーンをもっていたのです。
 姉妹篇の『江戸の漢学者たち』は、太田全斎らの『韓非子』注釈の仕事の話を、とくに興味深く読みました。そのほか、亀井南冥・昭陽、海保漁村、中村敬宇などの伝記があります。それらはもう少し詳しく書いていただければと惜しまれます。最後にある「安井息軒研究」はなかなか詳細で、息軒先生の死亡届まで引用されており、参考になりました。江戸の漢学は非常に広範ですが、息軒先生ら考証学者による詳細な仕事は、わが国の漢学が世界に誇るべき遺産です。それらの詳しい研究が、今後の課題になるだろうと思います。

明治の漢学者たち 江戸の漢学者たち
2001年9月9日公開。

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