書名 | 仏教漢文の読み方(新装版) |
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副題 | |
シリーズ名 | 旧版は「春秋選書」 |
著者 | 金岡 照光(かなおか しょうこう) |
出版社 | 春秋社 |
出版年次 | 旧版は、昭和53年(1978年) 新装版は、平成12年(2000年) |
ISBN | 9784393101063(旧版) 9784393101520(新装版) |
定価(税抜) | 1,339円(旧版) 1,800円(新装版) |
著者の紹介 | 著者(1930-1991)の専門は、唐代俗文学・中国宗教文学史です。旺文社の大学受験ラジオ講座の漢文を十年以上担当されていたことで知られています。『中国故事成語辞典』(三省堂)、『中国名言辞典』(東京堂出版)、『敦煌の文学』(大東出版社)、『敦煌の民衆』(評論社)などの著書があります。 |
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本の内容:
わが国の文化は、古代から仏教の大きな影響を受けてきました。しかし、わが国の漢学は儒学偏重で、仏典(仏教経典)を不当に軽んじています。そのため、漢学を相当に学んだ人でも仏典はまったく読めないということも珍しくなかったのです。たとえば、諸橋轍次博士は百歳にして『三聖対談』(講談社学術文庫)なる本を書いていますが、その序文に、仏典読解にはずいぶん難儀したと、正直に告白しています。そのような事情により、仏典は語学的検討を加えられることのないまま、伝統的・宗派的読解に委ねられていたため、かの『大正新修大蔵経』ですら、初歩的な句読を誤っている箇所があるというのです。 著者はこのような現状を憂え、仏典を語学的に正しく解釈できるようにと、本書においてその読み方を解説しています。執筆態度はきわめて誠実であり、また非常に分かりやすく、仏教漢文の参考書として現在でも最高の本です。 本書は二部に分かれ、第一篇では、漢訳仏典とはいかなるものかを概説し、第二篇で具体的な語彙や語法を解説しています。 第一篇で興味深いのは、吉川幸次郎博士が指摘したという、漢訳仏典の言語的特色です。漢訳仏典は、全部を四字句で構成しようという特徴があること、当時(六朝期)の俗語を交えた雅俗折衷体の文章であることです。四字句作成のために助字や動詞の複合使用が行われ、加えて俗語が使用されたことが、いまや逆に難解の原因となっているのです。梵語の音訳が多いことも難解な理由の一つです。 第二篇でとりあげられる語彙・語法は核心をついたものばかりで、実際の読解にずいぶんと役に立ちます。ひとつだけ例をあげておきます。仏典では、「を」という意味で「於」の字が使われています。一般の漢文では、「を」の意味で「於」の字を使うことはありません。「花ヲ愛ス」は「愛花」であって、「愛於花」とは書きません。しかし、仏典ではほとんどの場合、「愛於花」のようになるのです。ですから、「仏ヲ渇仰ス」は「渇仰於佛」となります。私は本書を読んでいて、何度も目から鱗が落ちる思いがしました。 この本は、一般の漢文から一歩をすすめて、仏典を読もうとする人にとって、最初の導きとなるものであります。 | |
2001年9月9日公開。2002年10月13日一部修正。 |