日本漢文の世界:本の紹介

書名 日本近代漢文学
副題  
シリーズ名 人文日本新書 松之輯
著者 高 文漢(Gāo Bĕnhàn)
出版社 中国:寧夏人民出版社
出版年次 2005年
ISBN 7-227-02907-7 / I・747
定価 29.80中国元
著者の紹介 著者(1951-)は、中国の山東大学外国語学院教授。日本漢文学、日中比較文学の研究をされています。1997年度、わが国の国際日本文化研究センターにて客員教授を勤めています(1年間)。
本の内容:

 これは、わが国の明治時代の漢文学を、作品に即しつつ紹介した本です。それだけでも珍重されるべきですが、著者が中国人であり、中国人の読者を想定して書かれたものであることは、大いに特筆されるべきです。
 中国人の学者による、明治漢詩文に関するまとまった著作は、本書が始めてのものではないでしょうか。当然のことながら、本書は現代中国語・簡体字による記述のため、日本人には読みづらいのですが、中国で明治漢詩文の研究が始まっていることには大きな感動を覚えます。
 本書の内容は、五つの章から成っています。

 第一章 明治漢文学復興的背景
 第二章 明治前期的主要詩人
 第三章 明治中、後期的詩壇
 第四章 明治時期的文壇重鎮
 第五章 大正、昭和前期的漢文学

 第一章は、明治時代になぜ漢文学が盛んになったのか、その背景を考察します。ひとつには二松学舎等の漢学塾の隆盛、多くの詩社や文会が盛んに活動したこと、そして活版印刷の導入によって多くの漢詩文雑誌が興ったこと。そして何より、清国公使・何如璋や随員・黄遵憲ら当時の中国の一流の文人が外交官としてわが国に来て、わが国の漢学者たちと直接交流の機会を持ったことです。江戸時代の鎖国により、清国と正式の国交が始まったのは明治時代でした。中国の文人と直接交流できるようになったことは、わが国の漢文学興隆の上で、大きな刺激となったのです。
 第二章以下は、具体的に個個の文人・詩人を紹介し、その作品を載せています。これらの記事は、三浦叶氏らの先行研究に負うところが大きいのは言うまでもありませんが、一読すれば、著者自らが資料を調査し、紹介作品等も苦心して発掘していることが分かります。そして何より個個の漢学者の紹介には、尊敬と愛情が感じられます。(たとえば、67ページ以下の村上仏山の項を読んでみてください。)この書きぶりには、著者の温良な人柄が反映しているのだろうと想像されます。
 本書には明治漢詩文の有名な作品が、多くの紙数を割いて丹念に紹介されています。ですから、本書は明治漢詩文の作品集としても高い価値を持っています。本書は、普通は漢詩文作品とは見なされない「和習」を含む作品や、狂詩等などをも「日本語が混じり、わかりにくいが・・」としながらも、一部紹介しています。(本書40ページ等。)こうした取り扱いにも目をみはります。
 本書の出現は、日本漢文学が世界的な研究対象になりつつあることを予感させるものです。今後の発展が楽しみです。
2007年11月11日公開。

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