日本漢文の世界:本の紹介

書名 孔子の見た星空
副題 古典詩文の星を読む
シリーズ名  
著者 福島 久雄(ふくしま ひさお)
出版社 大修館書店
出版年次 平成9年(1997年)
ISBN 4-469-23131-2
定価 2,400円
著者の紹介 著者(1910-1997)は、物理学者です。あとがきによると、四十年前、北大に奉職していたとき、近藤光男助教授とともに「詩話会」をつくり、星に関する詩文を蒐集しはじめたそうです。惜しいことに、本書上梓後まもなく他界されたとのことです。
本の内容:

孔子の見た星空―古典詩文の星を読む

 星にまつわる漢詩文を集め、解説した本で、類書のない、すぐれた業績です。それに、たいへん分かりやすく、おもしろい。また、パソコンで作成した星図がたくさん掲載されており、目をみはります。
 表題の「孔子の見た星空」は、論語為政第二の冒頭の文「政を為すに徳を以てすれば、譬へば北辰の其の所に居て、衆星の之に共(むか)ふが如し」の中の、「北辰」を扱っています。「北辰」はほとんどすべての本で「北極星」と訳されていますが、実はなんと、孔子の時代には、天の北極(北辰)には星がなかったのです。なぜかというと、地球の地軸は、とまりかけた独楽のように首振り運動をしているため、天の北極は長い間に少しずつずれてきているからなのです。これを歳差運動といいます。つまり、北極星は、次次と交代していきます。一万三千年後には、織女星(ベガ)が北極星になるのです。(歳差運動は、天文学では常識で、私の息子がもっている「学研まんが 星と星座のひみつ」という子供の本にものっているくらいですが、漢学先生がご存知ないのは、むりもないことです。)
 日本人の作品では、「雲か、山か、呉か、越か・・」で有名な頼山陽の「泊天草洋」の詩が出てきます。結句の「太白、舟に当たって月よりも明らかなり」は、あまりにも大げさで、きっと虚構だろうと誰しも思います。しかしなんと、山陽先生が九州に遊んだ文政元年八月二十五日(旧暦=新暦では九月二十四日)には、宵の明星(太白)は、最高光度にちかいマイナス4.2等であり、海面に近づくと、月のように大きく見え、その光が海に帯をつくっていたのです。この詩は意外にも実景を詠みこんだものだったのです。
 このほかにも、二十八宿や有名な星にまつわる詩文が、パソコン星図とともに掲載されており、それらを現代の星図と比較することも容易にできます。これは何でもないことのようですが、画期的なことなのです。古代中国の星図と現代の星図を比較して大混乱に陥った経験のある人なら、この本のパソコン星図に驚喜すること、まちがいありません。

 それでは、すばらしい星の世界を、ごゆっくりとお楽しみください。

孔子の見た星空―古典詩文の星を読む
2001年10月8日公開。

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