書名 | 解説字体辞典(普及版) |
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副題 | |
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著者 | 江守 賢治(えもり けんじ) |
出版社 | 三省堂 |
出版年次 | 普及版は平成10年(1998年)、原版は昭和61年(1986年)の発行。 |
ISBN | 9784385150345 |
定価(税抜) | 3,000円 |
著者の紹介 | 著者(1915-2011)は、文部省で長い間書道や国語表記について調査をされてきた方です。書法に造詣が深く、欧陽詢に私淑していて、夢の中でしばしば欧陽詢先生と書法対話をするほどだそうです。その夢中対話から生まれたのが『楷書の基本100パターン』(日本習字普及協会)で、漢字の習字手本として出色のものです。 |
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本の内容: わが国の漢和辞典は、ほぼ例外なく、『康煕字典(こうきじてん)』を模範として作られています。したがって、『康煕字典』で正字とされている字体が正字とされ、それ以外の字体は俗字とされています。しかしこの正俗の基準は本当に正しいのでしょうか。 本書冒頭に多数掲げられた写真版を見ていると、普段はまったく疑問に思わなかった『康煕字典』への信頼が、たちまち揺らいでくるはずです。古来使われてきた漢字の字体が、この字典には故意に載せられていないのですから。 『康煕字典』は、当時流行の清朝考証学で『説文解字』研究に熱心なあまり、数千年来の楷書の伝統を無視して篆書(『説文解字』の篆書は実在しない架空のものが多いのですが、それはさておき)から新たに創造した字体を「正字」としている例が多いのです。そのような新字体を清国皇帝の権威で漢字文化圏に普及させてしまったのですから、ずいぶん乱暴な話です。しかし皮肉なことに、『康煕字典』の勅撰序文には、『康煕字典』が否定している「俗字」が使用されています。つまり、康熙帝は「俗字」による筆写を暗に認めているわけです。本書は、『康煕字典』が俗字よばわりしている筆写体こそが楷書の正統であり、『康煕字典』がいかに独善の書であるかを、多くの図版をもとに徹底解明した稀有の書です。 さて、私たちは漢字を書くとき、字典体(明朝体)のとおりにおかしな字を書いていないでしょうか。たとえば、字典体では「者」の字のまん中に点がありますが、書写体にはありません。また、「益」という字の字典体は「八、一、八、皿」を上から重ねたような形ですが、これも書写体では「ソ、一、ハ、皿」でなくてはなりません。私たちも本書をしっかり学んで、人前で恥ずかしい字を書かないようにしていきたいものです。 本書は、漢字についての「常識」をくつがえし、文化というものの重厚さを教えてくれる、またとない名著です。書道を学ぶ人たちだけでなく、私たち漢文を学ぼうとする者にも必読の書であります。 | |
2001年9月9日公開。2012年3月3日一部追加 |