日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



谷干城(隈山) 七言絶句
たに・たてき(わいざん)


1837-1911。陸軍軍人。西南戦争で活躍。

谷干城 七言絶句 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

一自軽装去柳衙(韻)
飄如狂蝶逐煙霞(韻)
朝迷北郭夕南郭
探尽難波処処花(韻)
(七言絶句。平声麻韻)
   戊寅夏日酔後戯書  古狂隈山

[訓読]

(ひと)たび(みずか)軽装(けいそう)して柳衙(りゅうが)()
(ひょう)として狂蝶(きょうちょう)(ごと)煙霞(えんか)()
(あした)北郭(ほっかく)(まよ)(ゆうべ)には南郭(なんかく)
(さぐ)(つく)難波(なにわ)処処(しょしょ)(はな)
   戊寅(ぼいん)夏日(かじつ)酔後(すいご)戯書(ぎしょ)  古狂(こきょう)隈山(わいざん)

[語釈]

軽装(けいそう)
 西南戦争が終わったので、武装を解いて普通の服を着ること。作者は西南戦争で従軍し、戦功を立てた。

柳衙(りゅうが)
 軍営。ここでは作者が奉職していた陸軍のこと。

(ひょう)
 ふらふらと出歩く様子。

煙霞(えんか)
 自然の美しい風景

北郭(ほっかく)南郭(なんかく)
 町の北と南

難波(なにわ)
 大阪のこと。

戊寅(ぼいん)
 「つちのえ・とら」の年。明治11年(1878年)。

古狂(こきょう)隈山(わいざん)
 作者の雅号。

[訳]

戦争が終わったので武装を解いて平服に着替え、軍隊を辞めてからは、
ふらふらと狂った蝶のように自然の景色を求めて渡り歩いている。
朝には町の北方に迷い込み、夕方には南方を歩いている。
こうして大阪の花はあらかた見てしまったよ。
   明治11年夏、酔って戯れに作る。古狂隈山。

2009年3月28日公開。

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