本の内容:
本書は、講演会の筆録や、エッセーをまとめたものです。中世から近代までの漢語に関する面白い話がたくさん入っていますが、漢文関係で注目されますのは、巻末に載っている『漢文訓讀の入門(その一)~(その七)』です。これらは、江戸時代の漢文訓読入門書を紹介したものです。玄樹桂庵という人の『家法倭点』(応永年間)、貝原益軒の『訓点新例』(元禄16年)、太宰春台の『倭読要領』の三点が紹介されています。
桂庵和尚の『家法倭点』は、わが国に「宋学(=朱子学)」が導入されて日浅いころ、それまで博士家などで行われてきた訓読法を排し、新しい訓読法を提唱したものです。たとえば、「然則」は博士家ではただ「シカラバ」と読まれていたのを、「則」字があるのだから「シカラバスナハチ」と読むべし、というような改革です。近代訓読法の成立に関わる貴重な資料です。
さて、この『漢文訓讀の入門(その一)~(その七)』はもともと『荻生徂徠全集』の月報に連載されたものです。『荻生徂徠全集』は、七冊を世に送り出しただけで、中断してしまいましたので、この連載も「その七」で止まってしまったのは残念です。このテーマは、できれば敷衍して別に一冊としてまとめていただきたいものです。
2003年11月16日公開。