本の内容:
はじめて漢文に接する高校生を対象として書かれたもので、くだけた調子に乗せられてどんどん読んでゆくうちに、いつのまにか漢文が読めるようになるように工夫されています。
導入部は、冗談を交えながら、短いことわざなどを紹介し、その間にちゃっかり返り点などの最低限の説明をすませてしまいます。そして、少し長めの文章(虎の威を借る狐、矛盾)へと進みますが、これも軽い調子でいつのまにか読めてしまいます。あざやかな手腕です。
日本の漢学者の伝記(先哲叢談)や、『太平記』の漢文訳(岡島冠山訳『太平記演義』)など、おもしろい素材を選んでいるのに感心します。先哲叢談は、原念斎が書いた儒者たちの伝記で、面白いエピソードをたくさん集めています。岡島冠山は長崎通詞の出身で、荻生徂徠に中国語を教えたことや、水滸伝の訳を作ったことで有名な人ですが、『太平記演義』はあまり知られていない珍しい本です。これらの他にも、江戸笑話の漢訳、電車を見て驚愕した明治の漢学者・土屋鳳洲の文章など、笑わせる素材がもりだくさんです。
また、現代中国の新聞記事や、書簡文など、生きた漢文(「時文」と呼ばれていた文言文で、今は口語文にとって代わられましたが、この著書が出た当時はまだ使われていました)の例も出てきます。これほど盛りだくさんな漢文入門書は、ほかにはありません。
漢文をはじめて学ぼうとされる方にも、ある程度学ばれた方にも、ぜひとも一読をおすすめしたい本です。
2001年9月9日公開。2004年6月27日一部追加。